「大喜利」という道具の発見

2021年9月5日 Kazuyuki Motoyama / @kudakurage

大喜利 —Designing Positive Thinking Tool—

こんにちは、Spinners の元山 (@kudakurage) です。

去年からデザイン系の話をするポッドキャスト「resize.fm」を毎週金曜日に配信しています。当初やろうと思っていた目的どおり、たくさんのインプットとアウトプットを継続的にできています。メインテーマは相方の出口くん(@dex1t)と交代で持ち寄って話しているのですが、相手の持ち寄ってきた話の回もいろいろな学びや発見があって、個人的には学びの速度が上がった感じで非常に満足です。

始めた頃は特にしっかりとした企画なども考えていなかったので、resize.fmをはじめて数ヶ月が経った頃には少しマンネリ化してきたなぁという印象もありました。そこでポッドキャストで話すテーマのフォーマットについて二人で議論しながらアイディア出しをしていたのですが、そこで生まれた企画フォーマットの1つとして「大喜利フォーマット」というのがあります。

これは、最近気になる技術やテーマに関して大喜利のようにアイディア出しをするというものです。これだけ聞くと単に「アイディア出し」や「ブレイン・ストーミング(以下、ブレスト)」などと何ら変わりないように思うかもしれませんが、よくよく考えてみると「大喜利」には非常に重要な要素が多く含まれているなと感じました。

これを発見して、これからはビジネスの場でもブレストではなく「大喜利をやろう!」と言っていくのが良いなと思って実践しつつ、精度を高めていっています。

今回はこの「大喜利」という道具について紹介し、他の現場でも広まっていくといいなと思い、一般的なアイディア出しの手法であるブレストと比較しながら書くことにします。

ブレストのルールと、よくある問題

ブレスト(ブレイン・ストーミング)は、複数人で新しいアイディアを出すための手法ですが、効率的に様々なアイディアを出していくための基本的なルールがあります。

基本的にはこれらのルールを意識した上で行いますが、現場では往々にしてこれらのルールに反するような問題が起こりがちです。

例えば、「ラフなアイディアもOK」と言いつつ、雑なアイディアを出しにくい雰囲気がどこかにあると感じたことありませんか? 慣れている人はどんどんアイディアを出すが、初めての人や内気な人、慣れていない人はやっぱり言い出しづらいというのはよくあることです。これは量を重要視するブレストにとって大事なポイントです。

それから、どこかで現実を考えてしまいがちというのもよくあることです。 ビジネスの現場でのアイディア出しでは、ルールで「批判しない」「判断、決断しない」とあっても、言う方も聴く方もどこかで現実的か、実現可能かを考えてしまいがちというのが今までの経験から感じるところです。

「大喜利」の特性と可能性

次に大喜利が良いなぁを思う特性について考えてみると、以下のような部分があります。

面白いか?という身近で親しみやすい基準

大喜利をやろうと言ったとき、専門的な知識の有る無しや立場の高い低いなどを超えて、いかに面白い事を考えられるかがポイントになっているのが良いです。あの人のほうが詳しいからという基準で優劣がつきにくくなるからです。

それから、仕事で「ブレストをやろう」というよりも「大喜利しよう」という方がワクワクする気がしています。これも参加のための心理的ハードルが大きく下がっている証拠なのではと思います。

面白がる、面白いと思うものを考え話すツール

大喜利で出す話は、自分が「コレ面白いかも!」という話なので、話す人も気分がのっているところが非常に良いところだと思います。話している本人が面白いと感じれるかというのは、話し手本人の口調にも影響しますし、会話を盛り上げていく上で重要な指標ですよね。

それから、聞く人も面白いポイントを探す、面白がるという視点で聞いているというのも良いところだと思います。大喜利には基本的に間違った答えというのはないので、面白いのか?どこが面白いのか?という姿勢で捉えるので、会話全体が非常に前向きな感じになります。

さらに、面白いかどうかという視点には「実現姓」という観点はありません。みんなで面白いと感じることをたくさん考えていく作業なので、何かを生み出すことがゴールじゃないのが重要です。実現可能性はたくさん出てきたネタからさらにいいところを抽出して組み合わせて考えるなど、また違うフェーズで考えれば良いのです。

大喜利は、いい意味で無責任なのです。

大喜利には流れがある

大喜利番組を見ているとわかるように、大喜利にはその場の空気や雰囲気などがあり、他人の回答も聞きつつ、その流れの中から新たな面白いネタを生み出すというやり方があります。つまり、他人の回答をうまく使ったり、それを逆手に取ったりして「しかも、こうなったらもっと面白いよね」という掛け合いが自然にできる雰囲気なのです。

これはブレストのルールの1つである、「アイデアを組み合わせる」という文脈が自然に生まれ安くなると感じています。

大喜利はいいぞ

これらのことから、大喜利は「誰でも参加しやすい気軽でハードルが低い(質より量を意識する)」、「おもしろいという基準で話す(実現性など判断、決断しない)」、「どこがおもしろいかという視点で聞く(アイデアを批判しない)」、「その場の雰囲気から面白い事を考える(アイデアを組み合わせる)」というブレストの基本的なルールを自然な形で実践できるのです。

正直やっていることはブレストと何ら変わりないのですが、「大喜利」というラベルにするだけでこのようなマインドになれると思うのです。

以上が、私が大喜利がいいなと思うポイントですが、大喜利はアイディア出しの万能ツールではありません。大喜利をやるにあたって重要な要素として「問いのデザイン」について以下に書いていきます。

大喜利と問いのデザイン

resize.fmのep20で「問いのデザイン」という書籍について紹介した際も、大喜利との関係性について触れていましたが、大喜利にとっても「問いのデザイン」というのは非常に重要なポイントだと思っています。

大喜利のフォーマットと出題・回答方法

大喜利のやり方にもいくつか種類があると思っています。単純に口頭での回答や会話形式のみでやるという方法もあれば、テレビ番組のIPPONグランプリのように、フリップ(付箋やポストイット)を使って回答したり、もしくは「写真で一言」のように写真で出題されて上に口頭で答えるというものもあるでしょう。

口頭のみでの掛け合いでは、もっともライトにハードル低く行うことができるという点で非常に優れていますが、「質より量」という観点で考えると、この方法は効率が悪いと一般的に言われています。

もっと効率の良いのは、個々人でネタを考えるフェーズとそれらを発表するフェーズを分けるやり方だと言われています。これは、先程あげたフリップ(付箋やポストイット)を用いた回答方法の形式ですが、単純に自分が考えたことを羅列するように出していくというのは良くないやり方です。

単純に各々でネタを考えて、リストアップするだけなら、同じ時間に集まってやる必要はないですからね(アンケート的にやっておいてもらえばいいようなものです)。

大喜利では考えたネタが面白いか?というだけでなく、発表の仕方(演出)やその場の雰囲気によってより面白くできるか?という観点があります。つまり、考えたときには思っていなくても、他の人の答えを聞いて、うまくそれを取り込みつつ、より面白い回答をするのもOKなわけです。

フリップを使った回答方法には、文字を書く場合もあれば、絵を描く場合もあるかもしれません。絵を描く回答方法は文字にはない情報が多く含まれるという意味で利点が多い部分もありますが、場合によっては心理的ハードルを上げてしまう可能性もあると思っています。

例えば、大喜利をするグループの中に絵を描くのが上手い人と下手な人がいたとき、絵を描いて答えよというフォーマットだと、絵に苦手意識を持つ人にとって心理的なハードルとなります。少なくともフリップ等を使った回答の場合は、絵でも文字でもどんな形式で答えてもOKとしたほうが良いでしょう。

余談ですが「写真で一言」というのは、実は非常に難易度の高い出題形式だと思っています。

「写真で一言」というのは、出題された写真(画像)に対して一言を添えるという一見シンプルな出題形式ですが、答えるまでの過程には「写真(画像)の中から世間一般的に共通して感じるポイントを見つける」というテーマを見つける・課題を設定するというフェーズと、「見出したテーマを軸に面白いと思えるギャップなどを考える」という回答を導き出すという両方の役割が必要になるのです。

テレビ番組のIPPONグランプリでは、出題画像がランダムでその場で決定する上に、上記のような2段階の作業を脳内でしつつ、数秒以内で答えなければならないというのですから、あれをやっているお笑い芸人たちはいつも尊敬します。(きっと普段からたくさんそういうことを考えていて、その結果、反射的に答えられるよう鍛えられているんでしょうね…すごい)

スコープとテーマの設定

アイディア出しをどういう目的でするのかは必ずあると思いますが、その目的を達成するためにどういう出題形式・テーマで大喜利をするのかは非常に重要なポイントです。単純に「楽しい大喜利ができてよかったーで終わらせない」というのもそうなのですが、出題形式・テーマが回答の質にも量にも関わってくるからです。

特に重要なのが問題のスコープです。 例えば「今晩の献立が決められない」という課題を解決するためにどうしたら良いかという場合も様々なスコープで考えることができます。なぜ決められないのか?という視点では、単純に「思いつかない」ということもあるかもしれませんが「仕事や子育てが忙しくて考える暇がない」ということもあるかもしれません。結局いつも決められないながらも晩ごはんは作っているけれど、それが不満であるという視点では、その人が最終的に「どんな理想の食事風景を思い描いているのか」という考え方もあるかもしれません。

このように、アイディアを考えるポイントのスコープが変わることで考える視点は大きく変わり、大喜利の答えは質的に大きく変わってきます。

このあたりに関しては「問いのデザイン」という本で詳しく解説されているので、ぜひ読んでみることをおすすめします。

まとめ

長々と書きましたが、これからは仕事現場で「大喜利」をするのが普通になると良いなぁと思っています。この発想のきっかけをくれた出口くんはすでに以前から実践をしているし、まじすごいっす。こういう発見ができたのもポッドキャストという対話の時間を設けた恩恵だと思うので、これからもマイペースでポッドキャストを続けていこうと思います。

↓大喜利の発見について話したアフタートーク

あとがき「面白がる会と公共のデザイン」

大喜利はいいなと考えているときに「これなんかでこういうのあったよなぁ」とずっと思っていて、そういえば「面白がる会」にすごく似ているなと思ったことがあります。

「面白がる会」は、いろいろなテーマで世の中(地域)の課題についてブレストをしたい人たちが集まるラフなイベントです。参加したことはないので詳しいことは書けませんが、いつも活動を遠巻きに見ていて素敵だなぁと思っているイベントです。

イベント名に「面白がる」と入れている通り、大喜利と同じで「面白がる」ことでラフに考えることができたり、前向きに考えるというスタンスで議論されている会です。「面白がる会」を通じて実際に実現したイベントなどもいくつかあり、その1つの「ねぶくろシネマ」には私も何度か遊びに行ったことがあります。

「面白がる会」については、よく分かるインタビュー記事があるのでぜひぜひ読んでみてください。

面白がる会はいろいろなテーマで開催されているようですが、特に地域や街の課題などについて考えるのには、非常に良いやり方だと思っています。

いわゆる公共のデザインという取り組みにおいては、最近ではデジタル庁などの行政を中心としたデザイン的な考え方の取り組みや、若いデザイナーを中心に公共におけるデザイナーとしての取り組み「PUBLIC & DESIGN」などが行われています。

私個人としては過去に「住んでいる街とデザイン」という観点で考えたり仕事したりということもしていました。その頃から今もずっと核として持っていることは「街はその街の人たちがつくるもの」「住みたい街に住むのではなく、住んでいる街を住みたくする」ということです。

公共という言い方をすると「行政によって考えられ、みんなに与えられるもの」という印象がどこかにあるかもしれません。でも、自分の住んでいる街は現状でも自分の考え方や捉え方次第で住みたい街になり得ますし、その先にはもっと住みたい街にするというちょっとしたアクションもあるかもしれません。そんな街の人の「もっと住みたい街にする」というちょっとしたアクションが公共を形作っていくのだと考えています。

私の住んでいる狛江市にも「コマエカラー」というもっと住みたい街にするという活動があります。私がとある理由で引っ越してきたときにたまたまを見つけて、自分の中にある「もっと住みたい街」の姿と重なる活動をしていたので、ボランティアとして積極的にお手伝いさせていただいています。

そういった分かりやすい大きな活動だけでなく、近所の大好きなお店に通って応援するというのも、きっと「もっと住みたい街にする」というアクションの1つだと思います。

そんな風に、自分の住みたい街は自分でつくれるものだと思っているのです。

大喜利のように「面白い、面白がる」という思考は、前向きな考え方や参加しやすいハードルなど、街の人たちをポジティブに結びつけるピッタリのツールだなと改めて思います。難しいことは考えず、そんなことをガシガシ実践していっている「面白がる会」はやっぱりすごいなと思うのです。

1つの例として公共について書きましたが、「面白がる」というのはいろんな困難に立ち向かう事ができる人間ならではの武器なのかもしれません。

回りくどく、それっぽいことを書きましたが、まずは面白がっていこうぜ!

Kazuyuki Motoyama
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